2016-06-16

農業体験記録(1)

種別 : ボラバイト

場所 : 静岡県榛原郡川根本町

期間 : 2016年4月中旬 ~ 5月末

作業内容 :

Ⅰ. 菌床しいたけの収穫(仮選別含む)

栽培ハウスの中、ラックに置かれた人工菌床から生えた椎茸をはさみで切り、A品/B品に仮分けしながら採取していく。本来メインとなる作業だったのだが、時期的に茶が忙しくなるまでの数日間かつ短い時間作業したのみだった。

菌床しいたけ

Ⅱ. 茶園管理

① 耕耘機による中耕

茶木が根より酸素供給しやすいように、畝間を耕耘機で耕す。耕耘機はエンジンで回転・進行するものをハンドルでコントロールしながら行うタイプのものだが、場所によっては固い畝間があり、跳ね返りの振動が手首への大きな負担となる。

② 肥料散布

肥料撒き機を畝間に走らせて粒状の肥料を散布する。機械は上記同様エンジン駆動でハンドル操作するもの。振動は多くないが、慣れるまで散布スピードの調整が難しい。

③ 除草剤散布

エンジン付噴霧器のタンクに10リットルの除草剤を入れ背負い、茶園周りと畝間の雑草に散布してひたすら歩く。散布は茶木にかけないようノズル方向や噴霧量を調整しながら行う。天候や防除禁止期間などを意識して行わなければならない。

④ 雑草抜き・葉拾い

茶木には除草剤をかけることが出来ないので、畝の中に生えた雑草については手で引き抜く。特にイモヅルは先だけ抜いてもすぐ再生するので、根より抜く必要があり手間が掛かる。また茶木に乗った枯葉や茶以外の葉っぱなどについても茶刈りまでに取り払わなければならない。これらを行うことで、機械やはさみで茶刈した際の品質向上に繋がる。

川根名物の日本一短いトンネル。周りは茶畑が広がる。
⑤ 茶刈り

茶刈りには、乗用機による機械刈り、二人刈り機による機械刈り、手ばさみ刈り、手摘みといった方法がある。作業効率と刈り形状の品質は相反する関係にあるが、近年の茶況の下落や茶生産者人口の減少もあって、効率的な乗用機による機械刈りが一般的になっている。私は一番茶(新茶)刈り期に主として茶工場の受入業務に当たったため、二人刈りと手ばさみ刈りを少々やった程度であるが、バランスをとるのがなかなか難しい作業である。茶刈りは雨天時には行わないが、雨上がりや早朝はそのまま刈ると露が乗り品質を落とすので、刈る前にブロワがけの手間が発生する。

⑥ 茶葉搬送

刈り取った茶葉は熱焼けしないよう管理し、ある程度まとまったら速やかに荒茶加工工場まで搬送する。工場と離れた山奥の茶園を何往復もするのは忙しい。

⑦ ならし

機械刈りは地面に対して一定の高さで刈っていくため、茶葉の生育高さが一定でないと刈り取ったものにばらつきが出て品質が低下する。このため一番茶を刈った後、二番茶の生育に備え、表面を一定に刈り込む。作業的には収穫のない茶刈りだが、その分散らかるので掃除が伴う。

⑧ 中切り

来年の樹勢回復を目的に茶木を一定の高さ(地面より30~50cm)で刈込む作業。乗用の中切機が入れられるところはそれで行うが、端部の仕上げや地形により乗用機が入れられない場所については、せん枝機や円盤草刈機などを利用する。茶木は固く、畝全体を重いせん枝機で綺麗に行うのは肉体的にきつい。まして傾斜地となればなおさである。

⑨ 茶木伐採

先にも書いたとおり、乗用機による茶刈り作業の効率化が進んでいるが、どんな形状の茶園でも乗用機で刈れるわけではなく、道から乗用機が入れるように茶園を改造する必要がある。大きく茶木を伐採しなければならない場合もあり、重機が入れないところは機動性のある円盤草刈機を人間が振り回して伐採していくが、茶木の根本は太くて固く力が必要で、炎天下ではなかなかの重労働である。


Ⅲ. 荒茶工場作業

① 受入前設備清掃

お茶は煎じて飲む食品として工場の衛生および品質の管理は重要である。一番茶受入前と二番茶受入前の大掃除に関わるが、機器の中の水洗いなども行うためそれぞれ数日を所要する。

② 茶葉受入(搬入及び事務)

投入コンベヤ(写真左)と生葉コンテナ(写真中央)
私が関わった荒茶工場は周辺茶農家が組合員になって共同で運営しているもので、茶刈り時期に合わせて年3期ほど稼働する。それ以外の時期は基本使用されない。

稼働時は基本的に朝9:00~18:00まで茶葉の受入をする(天候によっては変更)。一連の流れは以下の通りで、受入スタッフ2名だが、一日に数度搬入ラッシュになるので、その時は一息つく暇もなく作業に追われる。搬入総量が10tonを超える日はもうクタクタである。

搬入者、茶園、品種、刈り方(はさみ・てづみ等)のデータ入力
   ↓
トラックスケールで重量取込(搬入車両ごと)
   ↓
サンプル番号の発行
   ↓
投入コンベヤの稼働、熱取り送風機の稼働
   ↓
茶葉荷下ろしおよび生葉コンテナへの投入
       ⇒(加工担当者が適宜加工行程に送る)
   ↓
サンプル採取および保管  ⇒(鑑定者が品質を格付)
   ↓
トラックスケールで風袋重量取込
   ↓
伝票の印字発行
   ↓
受入場の清掃

加工場内。通路右側に粗揉機が数台並ぶ。
熱を持った茶葉が搬入されてきたときには影響が出ないよう冷ましつつ投入したり、また露含みの茶葉が搬入されたときは重量より露引きしなくてはいけないためその程度を記録したり、茶葉の扱いには細かい配慮を必要とする。刈り方や品種で投入先コンテナを変えたりする場合にはさらに手が掛かる。特に一番茶は組合員にとって一番の収入源となるだけに、その頃は全体がピリピリしている。とはいえ、組合員さんと毎日会話していればそれなりに打ち解けてくるし、いろいろな情報を得ることが出来た。

③ 事務所雑務

工場の事務所に当たるエリアの清掃・片付け、電話対応など。やることはこまごまとたくさんあった。

④ シブ取り作業

製造された荒茶。この後問屋で仕上げがされる。
工場の加工機器は加工担当者により午後から稼働され、その日の受入た茶葉の荒茶加工が全て終わるのは深夜から早朝にかけてとなる。

粗揉機は茶葉を通すと内面にシブと呼ばれるタール上成分が付着し品質低下や機器安定稼働の妨げになるため、毎日機器が止まった後これをスクレーパー等で除去する必要があるが、加工担当者は機器停止後も荒茶を梱包し問屋へ出荷する準備があるため、受入等の我々が作業にあたった。機器は狭く作業性が悪い上に、時間をおくとシブが硬質化して剥がしにくくなり苦労した。

ちなみに剥がしたシブは業者が引き取っていく。家畜の飼料等に混ぜると肉の臭みが減るらしい。


体験所感 :

・お茶の生産はなかなかの肉体労働である。私自身も携わっているうちに慣れてきたところが多々あるけれども、とても独りで取り組めるものではなく、家族を巻き込むか従業員を雇うなどして成り立つ農業だろう。一方で菌床しいたけなど施設で生産する農業はやり方を工夫すれば独りでも可能だと思う。もちろん露地に比べて大きな設備投資が必要だが。

・滞在中は用意された古民家に他のバイト連中と共に宿泊生活する、いわゆる「シェアハウス」状態だった。お世辞にも綺麗と言えない住居で、来た次の日逃げ帰った人もいたが、こればかりは個々の許容度に依るので仕方ない。プライバシーも有って無いような状態で、年代もさまざま性格もいろいろな人がいるので、細かいことを気にする人は耐え難いかもしれないが、期間限定で来ている身からすれば何事も客観視できて苦にはならなかった。ただ住居でインターネット環境が無かったのは不便だった(しかたないので法人の事務所でアクセスした)。田舎といえどもこの時代インターネット環境は欲しいところだ。

・ボラバイトはユニークなシステムではあるけれど、課題もある。今回私は農業研修の一環という意識で赴いたため不満はないが、ボラバイト運営元が広告掲載料と称して給与分の2割も手数料徴収するのは取りすぎじゃないだろうか。またいわゆる「ブラック」な雇用が結構ある(同居者談)にもかかわらず精査されていないところも、行く者にとっては博打になりリスクが大きい。

・川根を選んだ理由の一つは移住先候補として興味であり、休日に空き家物件と周辺環境を見て歩いたりもした。実際来てみると、この地が茶産業を中心に回っていて、良くも悪くもそれに依存し偏っていることを痛感した。それが好況ならまだしも明るい声は聞こえてこない。鉄道が走ってはいても決して利便性は良いとは言えず、まともな買い出しは島田市街まで車で片道4~50分かけて行く必要があるが、そういう不便さを許容してでも移住したい魅力がこの地にあるかと考えると、ちょっと二の足を踏んでしまう。場所はどこであれ、移住決断に心を動かすには何らかの決定的な理由が欲しいのである。

昭和橋からの臨む大井川
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