2016-08-04

自分のための農

◆農業研修を経て考えること


作物を植え、管理して育て、収穫し食す。このことへの興味関心は、2度の農業研修を経て一層大きくなり、本格的に取り組んでみたい気持ちはさらに増した。また肉体的にも農作業に十分適応できると確信した。

しかし一方で、大量生産かつ大量廃棄、加えて過酷労働で低所得といった現実を目の当たりにして、慣行農業にはすっかり幻滅してしまった。
(過去記事 「農業体験記録(2)」 参照)

自分で育てた野菜は愛おしい。
それだけでも十分美味しくいただけるものを、
見た目だけの理由で大量に廃棄するなんて、
私にはとても考えられない。


◆就農研修受入拒否は結果的に幸いした


実は最初の農業体験の後、県の企画する「新規就農者研修」に申し込んでいた。これは受入農家のもとで1年間の研修を行った後、その地域&研修作物で就農するというプログラムである。新規就農者助成金の給付年齢を超えていたため研修中は無収入だが、修了後には地域JAの支援により農地と販路が確保されるため、農業設備に数千万の初期投資が必要でもこのレールに乗る方が手っ取り早いと考えたわけだ。

応募後、農林事務所の面談で好感触だったので、すっかりその気になっていたが、受入先農家の訪問を提案されたので訪ねて行ったところ「奥さんの協力が得られない者や独身者は受け入れない」とその場で門前払いされた。事前に癖の強い人だとは聞いていたが、あまりにも失礼な対応に呆れてしまった。ただ後日冷静になって考えると、奥さんという無償の専従者をも酷使して労働しないと、とても回していけない現実があるということであって、多大な投資と過酷労働でかろうじて成り立つようなものに勢いで身を投じなくて良かったとつくづく思う。

県が主催する農地見学会で遠州地域へ行ったとき、
JA担当者は新規就農者の受入条件を
「投資資金800万以上あって、妻帯者であること」と言った。
さすれば就農3年後に350万の所得が見込めるってさ、共稼ぎで。


◆私が目指すべきもの


そもそも会社を辞めた自分が目指したものは、

” セルフメイドな生活、精神的豊かさを得るため 、田舎暮らしをしよう ”

ということである。そこでの収入源として「農業」を想定したため、農作業体験や移住先情報収集を兼ねて農業研修に参加したのである。しかし、経済性に主眼を置いた「慣行農業」を展開することで、精神的豊かさどころか疲弊してしまう可能性が高いとなれば、目指すライフスタイルとは大きく反目してしまう。

農をベースに精神的豊かさを求めるような田舎暮らしは、所詮「絵に描いた餅」の理想論だろうか?数週間ネットで情報を収集したり図書館で本を読み漁ったりしながら自問自答の末、たどり着いた結論は、

” 商売としての農ではなく自分のための農、
  すなわち 「農業」 ではなく、「自給農」 をやろう ” ってこと。

【自給農のメリット】

・地域農政や経済などに縛られることなく、自分の作りたいものを自由に作ることが出来る。

・基本自給用なので理不尽な出荷規格にあわせ廃棄するような無駄はない。

・当然出荷ノルマもない。

・等身大の 「自給農」 なら1人当たり 5アール(500㎡)もあれば事足りるらしく(中島正 著「自給農業の始め方」より)、土地の確保は小規模でいい。

・なので大がかりな機械や設備は必要としない(イニシャルコスト、ランニングコスト共に小さい)。

・「有機農法」の手法を取り入れ、資源を有効に利用することで、無農薬かつ少肥料での栽培が可能になる。

・もし沢山収穫できたら販売したっていい。法律的に全く問題なし。

【自給農のデメリット】

・農による収入は期待できない。
⇒ 幸い蓄えがいくらかあるので、食いつぶしながら行けると踏んでいるが、生活費を補填する必要があるなら、時々バイトに出たっていいよね(もちろん農でなくていい)。

・生産効率が悪い。
⇒ 商売じゃないので問題なし。むしろ効率など求めずじっくり楽しくやりたい。

・農業従事者でないので、固定資産税が激安な「農地」の所有は出来ない。農業資金の無利子借入も出来ない。
⇒ 大規模にやる必要がないので、実質的に関係なし。

自給農は言ってみればベランダ菜園の拡大版。
ビジネスじゃないからこそ楽しくやれるのかもしれない。


目指す方向がハッキリしたことで、心のモヤモヤは消え、一気に視界良好となった。田舎暮らしへの意欲も一層増し、条件を満たす物件探しにアクセルを踏み込むと、好機は意外と早くやって来るのであった。詳細は次回の投稿で。
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